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ボーネス 2 [ローランド]

僕らの案内人は、まずグレーン倉庫へと連れて行ってくれました。
中庭の端に位置しており、
鉄道の貨物車がグレーンを
巨大な屋外ホッパーへと搬入しています。
ここからエレベーターによって全ての建物へと運搬されて行くのです。
キルン(乾燥塔)が2塔隣接しており、
この内の1塔は新設されたばかりで
綺麗な外見をしておりとても背が高いです。
その寸法は長さ33フィート(約10メートル)
幅45フィート(約13.7メートル)で
床は鉄板敷きとなっています。
もう一方のキルンは、それほど背が高くなく、
寸法は長さ31フィート(約9.4メートル)
幅26フィート(約7.9メートル)です。
グレーンは乾燥時にこれらの床に
2フィート(約60センチメートル)の高さまで広げられます。
そして、僕らは道を渡り粉砕棟へ至りました。
4つの階層に分かれており、7対の粉砕機を擁しています。
5対はトウモロコシの粉砕用で、他はモルト等の粉砕に使用されています。
ここから僕らは、
3箇所あるグリストロフト(粉砕穀物置き場)へと進みました。
最上階はトウモロコシ専用で、その下は粉砕した大麦、
一番下はモルト用です。
この建物の裏側には
屋外に3槽の加熱タンクが設置されており、
この内の1槽は容量が7千ガロン(約31.8キロリットル)で
その他の2槽は容量が8千ガロン(約36.4キロリットル)です。


粉砕棟に隣接しているのはマッシュハウス(糖化棟)です。
ここには3槽の巨大なトウモロコシ用のマッシュタン(糖化槽)があり、
その寸法は直径25フィート(約7.6メートル)
深さ7フィート(約2.1メートル)です。
全ての糖化槽は回転式攪拌器を内蔵しており、
動力は蒸気です。
僕らは階段を数段上り、第一タンルーム(醸造棟)に至りました。
天井の高い空間で、間口は90フィート(約27.4メートル)
奥行きは50フィート(約15.2メートル)、
8槽のウォッシュバック、
あるいは発酵桶と呼ばれる桶があり、
各容量は1万3千ガロン(約59キロリットル)です。
ドアを抜けると、第二ダンルームへ至りました。
ここにはさらに6槽のウォッシュバックがあり、
各容量は6千ガロン(約27.27キロリットル)です。
第一タンルームの天井部に4台のモートン社製冷却機
容量4千ガロン(約18.1キロリットル)のワーツレシーバーがあるのを認めました。
ワート(麦汁)は重力に従い、これらのタンクを出発して
ウォッシュバックに流入します。
ブリューイングハウス、あるいはタンルームに隣接して、
古めかしい建物が建っています。
教会の廃墟のような見た目で、
ここでは昔、ポットスティルでウイスキーが作られていたそうです。
現在はタンルームを拡張する為に
取り壊しが進んでいます。
醸造棟の地下には2台の遠心分離ポンプと20馬力ドンキーエンジンがあり、
マッシュタンから冷却機へとワートを汲み上げる用途で使われています。
ここにはさらにアンダーバックも設置されており、
その容量は4千ガロン(約18.1キロリットル)です。


次に僕らはスティルハウス(蒸留棟)へと連れて行ってもらいました。
石造りの建物で、その寸法は80フィート(約24.3メートル)四方、
見事な連続式蒸留器があり、
通常あるような連結器具が取り付けられています。
部屋の一方には2槽のウォッシュチャージャーがあり、
各容量は1万3千ガロン(約59キロリットル)です。
ここからウォッシュ(もろみ)はポンプでスティルへと汲み上げられます。
より高い位置の、スティル上部には2槽の木製ワームタブがあります。
形は長方形で、豊富な量の水が供給されています。
また、セーフサンプリングセーフも設置されています。
下方のギャラリーには2台のスピリットレシーバーが設置されており、
それらの容量は2千276ガロン(約10.3キロリットル)と
2千285ガロン(約10.38キロリットル)です。
さらに、容量136ガロン(約618リットル)のエーテルレシーバーがあります。
このタンクは、蒸留時に取り出されたスピリットの不純成分を集めるものです。
ウォッシュチャージャー上には冷熱両方のフェインツレシーバーがあり、
熱フェインツレシーバーの容量は1千ガロン(約4.54キロリットル)
冷フェインツレシーバーの容量は1千150ガロン(約5.2キロリットル)です。
また、冷フェインツコンデンサーと巨大な銅製の「オイル・トラップ」もあります。
これは、スティルから排出されたフェインツとフーゼル油を集約して分離する仕掛けです。
フーゼル油は残留し、フェインツはポンプでスティルへと汲み上げられ、精留されます。


次に僕らはスピリットストア(樽詰室)を訪れました。
幾つかあるグレーン倉庫の内の1棟の下に、
利便性を考慮して建設されています。
内部には2槽のヴァットがあり、
それらの容量は4千578ガロン(約20.8キロリットル)と
4千988ガロン(約22.6キロリットル)です。
道の反対側には、背の高い塔があり、
その上に排水タンクが設置されています。
すぐ側を鉄道の貨物車が通り、ドラフを搬出していく一方で、
搾り取った液体はマッシュハウス(糖化棟)へと戻されます。
ドラフは、マッシュタンから
500ヤード(約457ヤード)の距離をこのタンクへとポンプによって送られてきます。
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ボーネス 1 [ローランド]

エディンバラからボーネスに至るには、
地域内で最も多様な魅力を持つ美しいマナヴォンサイド村落の
マニュエルで客車を乗り換えます。
マニュエルを発つと、
エイヴォン川を越えました。
そして、ほんの一瞬ですが
美しいエイヴォンデールが眼前を過ぎて行きました。
木々に覆われた谷に鎮座する巨岩の合間を川が流れ、
水が岩に当たって幾つもの滝を成しています。
僕らの列車はフォース湾を周回してボーネスに至りました。
旅の全行程は1時間未満です。


僕らはいささかボローストーネス、
あるいは現在の呼び名である、ボーネスの街に落胆してしまいました。
というのも、炭鉱や鉄工所が景観を壊していたからです。
ここはフォース湾間近の、
とても海抜の低い半島部にある港町であり、
リンリスゴーからは3マイル(約4.8キロメートル)の距離にあります。
ボーネスは100年前、東海岸で最も成長著しい街で、
スコットランド第三の港と言われていました。
しかし、フオース・アンド・クライド運河
グレンジマスへ開通したことによって
グレンジマスが商都・港湾都市として独立してみるみる発展し、
ボーネスを凌駕するようになったのです。
ですが、ボーネスは未だにその重要性を失っておらず、
大規模な鉄鋼業、窯業、薬品・肥料製造、
そして最後になりましたが
この章の冠たる巨大な蒸留所によってよく知られています(訳注)。


蒸留所は鉄道の駅と港からは半マイル(約600メートル)の場所にあり、
敷地面積は4エーカー(約1万6千平方メートル)で、
岩場の露わな丘「パンズ・ブレイ」の頂上に位置しています。
蒸留所敷地裏手の道や
所内の建物の幾つかは岩を切り出して築かれています。
蒸留所の創立は1830年で創立者はA・ヴァナン氏です。
1873年に現在の経営者であるコルダー氏に経営が移っています。
創立当時はモルトの蒸留所でしたが、
1876年に大規模な拡張が施され、
グレーンの蒸留所へと改装が行われました。
敷地は主要な道路とフォース湾に面しており、
間口は700フィート(約213メートル)、
長方形を成しており、周囲は塀に囲われています。
僕らはスライド式の門扉のあるゲートを抜けて入所しました。
ここは鉄道貨物車の入り口でもあり、
波止場とノース・ブリティッシュ鉄道からの引き込み線が通っています。
入り口の右手は事務員や税務官の詰める新設のオフィスで、
その先はグレーン貯蔵庫、制麦場、建設中の熟成庫で、
これが完成すると地域内では最大のものになると言うことです。
花崗岩の石造りの建物で、
寸法は間口240フィート(約73.1メートル)
奥行き150フィート(約45.7メートル)です。



訳注

この辺の記述に登場する地名などを
地図にまとめてみました!


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ローズバンク 3 [ローランド]

ドラフはシャベルでマッシュタン(糖化槽)から搔き出され、
直下の舗装された地面に落とし込まれ、
農夫たちが荷馬車で運搬します。
マッシュタンの下は容量2千ガロン(約9キロリットル)のアンダーバックで、
ここからワート(麦汁)はポンプによって
スティルハウス(蒸留棟)の温水加熱タンク上に設置された
第一冷却機へと汲み上げられます。
そしてワートはここから重力に従ってタンルーム(醸造棟)の第二冷却機へと至ります。
次に僕らはタンルームへと向かいました。
ここはマッシュハウス(糖化棟)と同じくらい清潔で明るい建物です。
内部には8槽のウォッシュバック(醸造槽)があり、
各々の容量は3千500ガロン(約15.9キロリットル)で、
内部の泡切りは蒸気で駆動しています。
また、スコットランドでは2台目に導入されたという、
見事なモートン社製冷却機があります。
これは蒸留所では普通なことですが、
ウォッシュバック(醸造槽)からの排水パイプは全て銅製で
止水栓は真鍮製です。
冷却機は頭上のギャラリーに設置されており、
建物の半分くらいの大きさを占めています。
僕らは次に階段を下がり、
スティルハウス(蒸留棟)へと至りました。
古めかしいポットスティル式の蒸留釜が3基あり、
この内の2基は容量が3千ガロン(約13.6キロリットル)で、
残りの1基は1千500ガロン(約6.8キロリットル)です。
この建物は巨大で天井が高く、
高さ40フィート(約12.1メートル)、
70フィート(約21.3メートル)四方で
開放式の換気屋根となっています。
内部にはポットスティルを除くと、
見事な28馬力クランクオーバーヘッドエンジンがあり、
2槽のフェインツレシーバー、
1槽のスピリットレシーバー、
1槽のローワインレシーバー
ワートと水を汲み上げる為の2台の複動式プランジャー・ポンプ、
ウォッシュ(もろみ)をウォッシュチャージャーへ張り込む為のポンプが2台あります。
サンプリングセーフ
レシーバーを見下ろすプラットフォーム上に設置されています。
次に僕らは保税倉庫を見学しました。
第一倉庫は間口108フィート(約32.9メートル)で
二つの区画に分かれており、3階建てになっています。
第二、第三、第四は一つ屋根の下に建っています。
この内の1棟は縦156フィート(約47.5メートル)
横34フィート(約10.3メートル)です。
その他は81フィート(約24.6メートル)×66フィート(約20.1メートル)です。
第五は3階建てで、第一と同様の寸法となっています。
第二保税倉庫にはブレンディングの為のヴァットが2槽あり、
交換の時にブレンディングを行います。
容量は2千064ガロン(約9.3キロリットル)と1千214ガロン(約5.5キロリットル)です。
地元での貿易に使用するラッキングストアは第一倉庫の隣にあります。
保税倉庫は、50万ガロン(約2千273キロリットル)の貯蔵容量があります。


反対側にはスピリットストア(樽詰室)があり、
保税倉庫と連なっています。
両側にドアがあり、各部署と繋がっています。
室内にあるヴァットの容量は3千ガロン(約13.6キロリットル)です。
僕らは3つの円形ワームタブがレンガ製の台座の上に設置されており、
スティルへと留液を張り込めるようになっているのを認めました。
煙突は高さが150フィート(約45.7メートル)あり、
2本の送気菅が繋がっています。
レンガ壁内には30フィート(約9.1メートル)の高さまで
内部ケーシングがあります。
機関部門にはギャロウェイ製双燃料ボイラーがあり、
その寸法は長さ30フィート(約9.1メートル)
直径7フィート(約2.1メートル)です。


消火設備はとても充実しており、
3台の消化器と消火ホースと消火栓が敷地内にあります。
さらに、最新鋭のクーパレッジ(制樽作業場)が
制麦場、作業員の住宅、ランキン氏の所有地と隣接しています。
前述した新しい事務棟には貴賓室、醸造責任者室、所長室、事務員室があります。
税務官のオフィスはクーパレッジにあります。


道沿いには最新鋭の計量器材があり、
ローズバンク蒸留所(訳注)に持ち込まれる樽や石炭を検品する事務室が付属しています。


この施設で製造されるウイスキーは純粋なモルトです。
年間生産量は12万3千ガロン(約559.1キロリットル)で、
主にエディンバラとグラスゴーで消費されています。
ギャヴィン・ラッセル氏、ウィリアム・バスタード氏、
補佐官の3名の税務官が駐在しており、
前者の2名は13年以上もこの蒸留所に勤務しています。




訳注


こちらの本によりますと、

Malt Whisky Yearbook 2017: The Facts, the People, the News, the Stories

Malt Whisky Yearbook 2017: The Facts, the People, the News, the Stories

  • 作者: Ingvar Ronde
  • 出版社/メーカー: MagDig Media Ltd
  • 発売日: 2016/10/13
  • メディア: ペーパーバック


ローズバンク蒸留所は1993年に操業停止し、
2009年に器材が盗難に遭ってしまったのだそうです!
がーん!
建物は残されていて、レストランやオフィス、住居などになっているそうです。
まだ出回っているボトルもあるので、
味見されたことがある方も少なくないでしょうね〜
(管理人は残念ながら飲んだことないです〜)

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ローズバンク 2 [ローランド]

三角形を成す建物である制麦場へ向かう為、
僕らは運河に架かる旋回橋を渡り、下側の門を潜りました。
そしてまず第一バーレーロフトヘト案内されました。
高さ20フィート(約6.1メートル)の見事な外階段を登り、
石とレンガで出来た建物の最上階から入室します。
各階は鉄柱で支えられており、
内部の階段は滑車に固定されています。
これはとても単純な仕掛けで、
思うままに上げたり下げたり出来ます。
この大麦倉庫では3千クオーターの穀物を貯蔵可能であり、
建物の寸法は長さ320フィート(約97.5メートル)
奥行き50フィート(約15.2メートル)です。
蒸留所経営者が敷設した私道に面しており、
この私道は上方の門へと通じているので、
農夫たちは荷馬車を用いて
この階層へ直接大麦を搬入することが可能です。
モルティングフロアが階下にあり、
その面積は上階と同一で床はコンクリートとなっています。
2槽の巨大な鋼鉄製スティープ(浸麦槽)があり、
一度に160クオーターを浸麦することが可能です。
上階には貯水タンクがあり、
その容量は1万ガロン(約45.4キロリットル)ほどです。
このタンクによって、スティープに水を満たすことが出来ます。
この建物の隣にはキルン(乾燥塔)があり、
寸法は高さ43フィート(約13.1メートル)
横55フィート(約16.7メートル)
縦45フィート(約13.7メートル)です。
床はワイヤークロス敷きで、
防火扉によって密閉されています。
加熱炉は鉄板で閉じられており、
これはベンモア蒸留所と同様の方式です。
乾燥には主にピートが使用されています。
4マイル(約6.4キロメートル)ほど先には良質な湿地があり、
キルンの炎に焚べる為の十分な量の燃料を確保することが出来ます。


僕らの案内人は、次にモルトデポジット(麦芽倉庫)へと案内してくれました。
これはキルンと同じ寸法の建物で、
二階建てになっています。
採光は明るく内壁は天井まで赤い木材を並べてあり、
モルトの乾燥を保っています。
ここ及び全ての建物の梁は赤い木材と鉄板をサンドイッチ状にして
ボルトで固定してあります。
モルトはキルンからシュートを伝って来ますが、
これをコントロールしているのは2つの開閉弁です。
この場所でモルトを袋詰めにして、
荷馬車で蒸留所の建物へと運びます。
麦芽倉庫の下はピート小屋になっています。
その更に下にはセメントとレンガのタンクが埋設されており、
水源からやって来た水はここで一旦貯水され、
前述したバーレーロフトの階層へはポンプで汲み上げられます。
このポンプは水車を動力とするドンキーポンプです。
先ほど述べた昔の蒸留所の名残は、
近くにある小規模な制麦場です。
現在の使用に合わせて改装を施されており、
大麦倉庫とスティープが1槽、2面のモルティングフロア、
キルン、麦芽倉庫があります。
麦芽倉庫は赤い木材の壁板となっています。
この3階建ての建物は丘の低い位置に建てられており、
僕らが最初に潜った門の近くにあります。
そして先述のより大規模な制麦場の地上階とこの建物の上階同士が
連絡通路で繋がっています。
これら施設周辺には主席制麦責任者のための居宅が建っています。


僕らは再び運河を渡り、蒸留所の施設へと至りました。
建物の占有面積は1エーカー半(約6千平方メートル)で、
運河に面しています。
波止場にほど近く、ここから毎日グラスゴーへ向けて船が発着しています。
僕らは建物に囲まれた中庭に至りました。
左右には見事な新築の事務棟、
熟成庫の数々などが並んでいます。
右手には更に粉砕棟と倉庫があり、
反対側はマッシュハウス(糖化棟)、スティルハウス(蒸留棟)、熟成庫、税務官事務所になっています。


僕らは粉砕棟を訪れました。
それにはまず階段を登ります。
建物内部のアーチの上の二階層が粉砕棟になっており、
一対のモルトローラーを有しています。
この時僕らはボイラー棟の屋根に巨大な貯水タンクがあるのを認めました。
3槽の鉄製温水加熱タンクは各々容量が1千500ガロン(約68.1キロリットル)で、
最も堅固に建設されたスティルハウス(蒸留棟)の鉄柱の上に位置しています。
次に僕らはマッシュハウス(糖化棟)に入りました。
30フィート(約9.1メートル)四方のレンガ造りの建物で
6つの採光窓があり、
まばゆいばかりの白い壁となっています。
室内には円形の鉄製マッシュタン(糖化槽)があり、
その寸法は直径16フィート(約4.8メートル)
深さ6フィート半(約1.9メートル)で、
通常あるようなマッシングマシンと複動式攪拌器を有しています。
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ローズバンク 1 [ローランド]

エディンバラからフォルカークへの道のりは
およそ40分の鉄道の旅です。
僕らは早朝に出発し、
1日の内の一番いい時間を
この興味深い蒸留所で過ごすことが出来ました。
ローズバンク蒸留所はフォルカークから
1マイル(約1.6キロメートル)の距離にあり、
キャロン川から半マイルの場所で、
フォース・アンド・クライド運河の岸にあります。
他の蒸留所のように孤立した場所ではなく、
常に交通量の多い幹線道路に面しており、
さらにはボートや蒸気船が賑やかに行き交う運河にも接しています。
バンタスキン領地が蒸留所敷地に隣接しており、
蒸留所の裏手に美しい森の背景を成しています。
そして蒸留所左手にあるローズバンク邸宅の
見事な楡の古木にはミヤマガラスが巣を作り、
素晴らしい風景に寄与しています。


蒸留所で使用する水は
バンタスキンの地層に濾過され蒸留所に至り、
運河の下に掘られたトンネルを通って
運河を隔てて蒸留所とは反対側に位置する制麦場へと流れてきます(訳注)。
蒸留所がここに建てられたのは
水の供給が豊富であったからです。
周辺地域では初めての、そして現在唯一の蒸留所です。
有名な醸造業者であったフォルカークのジェームズ・アイトケン社は
1851年以前にこの水を自社の敷地内へ運搬して
ビール醸造を行っていました。
キャロン川の支流であるグレンバーニー川が
制麦場の麓に流れており、
下掛け水車を回しています。
この水車は、水をタンクへと汲み上げる動力となっています。


この場所は1世紀近くに渡って
蒸留となんらかの形で関わっており、
調査記録を参照すると、
1798年にはすでにスターク兄弟社が蒸留所を運営していたことを示しています。
現在ローズバンク蒸留所が占有しているその土地は、以前は制麦場でしたが、
1840年に現在の経営者の父親であるジェームズ・ランキー氏が
蒸留所としての運用を開始しました。
その5年後、建物は大幅に増築され、
1864年には現在の経営者によって近代的な様式で以って
完全に建て替えられました。
蒸留所に関わる全ての敷地は5エーカー(約2万平方メートル)で、
この内の3エーカーに蒸留設備が集中しており、
残りの土地は経営者ランキー氏の居宅の一つである、
ローズバンク邸宅とその庭園を成しています
蒸留所は、運河に隔てられて、
大きく2つの区画に分かれています。
一方には制麦場があり、
その面積は1エーカー余りです。
ここに以前はカメロン蒸留所が建っていました。
1865年にカメロン蒸留所は一部分を残して取り壊され、
現在は古めかしい制麦棟として建物が1棟残るのみとなっています。



訳注
このように、運河が蒸留所の敷地を分断するように
流れていたのですね!
rosebank2.jpg
古地図リンク
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バンキール 4 [ローランド]

バンキール蒸留所では現在、
タンルームの配置換え、マッシュタンの入れ替え、
遠心分離ポンプ付き鋳鉄製ウォッシュチャージャー導入など、
大幅な改築が行われています。
設備の機械系統はアロアのR・Gアバクロンビー氏が担当しています。


僕らは再び丘を降りて機関室を訪れました。
室内には高性能な蒸気エンジンと
2台の蒸気ボイラーがあり、
後者の寸法は長さ28フィート(約8.5メートル)
直径8フィート(約2.4メートル)です。
2本の煙突の高さは
100フィート(約30.4メートル)と
75フィート(約22.8メートル)です。
丘の麓には、
ボニー・ウォーター川に架かる橋があり、
その袂にはガスタンクとガス工場があります。
この設備により、蒸留所敷地内で使用するガス全てを賄っています。
近くには鍛冶場、整備作業場、倉庫、厩舎、そして馬車庫があります。
中庭の運河側には巨大なピート小屋があり、
カンバーノールド湿地で採掘したピートで満たされています。


火事に備えて敷地内には放水パイプが敷設されており、
水車の動力で駆動するポンプを用いて、
取水栓に繋いだホースで放水することが出来ます。
運河に面した中庭で最も目を引くのは、
巨大なもろみ粕タンクであり、
農夫たちの荷馬車が着けやすいように配置されています。
そして、ドラフハウスも隣接しています。
蒸留所左手にあり、
敷地からはかなり離れた位置に
模範的な養豚場が建っています。
四角形を成す建物群で、
中央部が豚舎となっており、
全てに番号が振られています。
ここで100頭の豚が飼育されており、
穀物やもろみ粕を飼料としています。
酪農家たちが引き取る以上に生じたドラフは、
こうして利益を生み出しています。


そして僕らはドープス川のせせらぎを渡って近道をして
新築で設備の整った蒸留所オフィスに至りました。
この建物は経営会社が使用しており
美しく堅固な様式を誇り、
壁や天井はオーク材のパネルで覆われています。
蒸留所の東門に面した幹線道路には
素朴なコテージが建ち、
マネージャーの居宅となっています。
そして、その少し先は従業員の住宅が建っています。


蒸留所裏手から4分の1マイル(約400メートル)、
丘の上方には、挿絵にあるように
(経営者)リスク氏が住むバンキール邸宅が
優雅に白鳥が泳ぐ小さな湖の畔りに建っています。
邸宅の周囲の土地は美しく造園されており、
表のテラスからは眼下に広がる美しい「オークの谷」を見渡すことが出来ます。


バンキール蒸留所(訳注)で製造しているウイスキーは、
現在は北ハイランドの製造法に則っていますが、
蒸留所自体はスコットランドのローランドに位置しています。
スピリットの品質は、
僕らにしてみれば素晴らしいハイランドスタイルの味わいでした。
年間生産量は15万ガロン(約681.9キロリットル)ですが、
この設備を以ってすれば
必要があれば18万ガロン(約818.2キロリットル)を生産することが可能です。





訳注

こちらの本によりますと、

Scotch Missed: The Lost Distilleries of Scotland

Scotch Missed: The Lost Distilleries of Scotland

  • 作者: Brian Townsend
  • 出版社/メーカー: Neil Wilson Pub Ltd
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: ペーパーバック


バンキール蒸留所は1925年にDCL(ディアジオ社の前身)に買収され、
1928年に閉鎖されています。
しかし、1971年まで制麦場が
1980年まで熟成庫が使用されていたそうです。
その後、1990年代に設備は取り壊されたそうです。


bankier.jpg
古地図リンク
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バンキール 3 [ローランド]

ブリューイングハウスの床下にはアンダーバックが埋設されており、
その寸法は長さ27フィート(約8.2メートル)
幅6フィート(約1.8メートル)
深さ5フィート(約1.5メートル)です。
このタンクがマッシュタン(糖化槽)からワート(麦汁)を受容します。
全てのタンクは美しく清掃されており、
暖かな赤色で塗装されています。
そして近くには、ウォッシュバック(醸造槽)へワートを汲み上げる
三連クランクポンプがあります。
僕らはしばしこの建物を後にして、
製造工程に従いバックハウス(醸造棟)へ至りました。
ここはとても広大で、
採光明るく換気のなされた空間です。
寸法は長さ50フィート(約15.2メートル)
幅55フィート(約16.7メートル)
高さ35フィート(約10.6メートル)です。
ウォッシュバック(醸造槽)5槽を有しており、
その容量は各々1万2千ガロン(約54.5キロリットル)です。
この施設は、室温を均質化したり清掃に用いる為の
最新の蒸気配管を有しています。
頭上には鋼鉄の梁に宙吊りにされた
モートン社製冷却機と冷却タンクがあり、
その隣には酵母室があります。
ここで僕らはスティルハウス(蒸留棟)へと戻り、
醸造槽で造られた液体であり、
今やウォッシュ(もろみ)と呼ばれるものが
いかなる運命を辿るのかを見極めることにしました。
僕らは中央のプラットフォームへ到着しました。
このプラットフォームは、
建物をブリューイングハウスとスティルハウスという
2つの部分に分断しています。
ここには、容量4千500ガロン(約20.4キロリットル)のウォッシュチャージャーが設置されています。
ウォッシュ(もろみ)は、醸造槽からここへ重力に従って送られてきますが、
チャージャーは程よく高い位置にある為、
もろみの次なる目的地であるスティル(蒸留釜)を満たすことが出来るのです。
プラットフィームには更に、
容量3千ガロン(約13.6キロリットル)のローワイン/フェインツチャージャーが設置されており、
その下側は5槽のレシーバーとなっています。
この高みにいると、
直下でせわしなく展開される場面を
見渡すことが可能です。
僕らの右手にはマッシュマン(糖化担当者)がおり、
糖化の作業に従事しています。
左手のスティルマン(蒸留担当者)は、
加熱炉の操作と真鍮製の器具磨き、
ガラス製のセーフに流入するスピリットの分析に忙しくしています。
この空間を支配する秩序、
そして作業員達が業務をこなす知的な立ち居振る舞いには
感心するばかりです。


蒸留釜は旧式のポットスティルであり、
次に記す容量となっています。
ウォッシュスティル(初留釜)は6千551ガロン(約29.78キロリットル)、
第一ローワインスティルは1千975ガロン(約8.9キロリットル)、
第二ローワインスティルは1千895ガロン(約8.6キロリットル)です(訳注1)。
この内の1基は
蒸気ジャケット(訳注2)を有するスティルであり、
製造メーカーはアロアのウィリソン社です(訳注3)。
そして圧潰耐用弁を有しています。
西側の壁にはローワイン/フェインツ用ポンプとスピリットポンプがあります。
僕らはこの興味深い部門を後にすると、
数ヤード坂を上り、スピリットストア(樽詰室)へ至りました。
容量4千ガロン(約18.18キロリットル)のヴァット
樽詰め用の器材があります。
更に僕らは7棟の熟成庫へ向かいました。
全て、それぞれに分離した建物であり、
蒸留所敷地の上方に位置しています。
とても広大な熟成庫であり、
建物は石造りでスレート葺き、
全棟で4千500樽を貯蔵しています。
僕らの訪問時は20万ガロン(約909キロリットル)余りの様々な熟成年数のウイスキーを貯蔵中で、
中には1874年製の物もありました。
2棟の熟成庫は、
その寸法が100フィート(約30.4メートル)×
60フィート(約18.2メートル)です。


これらの建物の反対側にあり、
スティルハウス(蒸留棟)の裏側には
2つのクーパレッジ(製樽作業場)があります。
一方は修理用で他方は清掃とスウィートニング(訳注4)が行われています。
後者の作業場では、樽職人がとても単純な方法で
樽を清浄にしていました。
蒸気と温水の配管がボイラーから敷設されており、
その先は分岐菅となっています。
まずは温水パイプを使い、
その後蒸気パイプを樽の栓口に挿入します。
そうすると、全面的に蒸気を当ててスウィートニングすることが出来るのです。





訳注1

ローランドモルトは、3回蒸留が伝統だと言いますからね!
この辺からローランドっぽくなって来たと思うと
コーフンしちゃいますね!



訳注2

以前、キャンベルタウンのヘーゼルバーン蒸留所の項目にあったのは、
蒸留釜のネック部分に
冷却水の配管ジャケットが取り付けられている、という記述ですが、
ここでは「蒸気ジャケット」なので、
冷却の反対ってことでしょうか!?
雑味成分をスティル下方に戻すのではなく、
効率よく取り出して
ヘヴィーな味わいにしたいのかな?



訳注3

北ハイランドのガーストン蒸留所にも、
ウィリソン社製スティルありましたね!
ここで言う「ウィリソン社」とは、
以前にも参照したサイトGlenlochy Distilleryさんによりますと・・・
http://www.glenlochy.com/SS_producers.html#Abercrombie
ウィリソン社はのちにR・Gアバクロンビー社に統合され、
これは1948年に現在のディアジオ社の前身であるDCLに吸収されています。
よって、バーナードが言及しているウィリソン社とは
現在のディアジオ社が擁する製銅部門、
ディアジオ・アバクロンビー社に直結しているのです!
https://www.diageo.com/en/news-and-media/videos/diageo-abercrombie-the-art-and-science-of-copper/
ディアジオほどの飲料巨大企業となると、
ポットスティルの製造やメンテも自前なのですね!
すごーい。
willison-chart.jpg


訳注4

「スウィートニング」についての管理人の見解は
オフタートゥール2の項をご参照ください。
また、もし詳しい方がこちらをご覧になっていらっしゃいましたら
ご教示頂けるとありがたいです!
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バンキール 2 [ローランド]

運河に架かる閘門橋を渡ると、バンキールの風景が一気に広がります。
とても活気が溢れ、
荷馬車が波止場へ向かったり、
波止場から蒸留所へ向かったりと、
敷地内では動きが絶えることがありません。
波止場は蒸留所の西門付近にあり、
アバディーンシャーやフォーファーシャー(訳注)から運ばれてくる大麦の玄関口となっています。


僕らはまず2つの制麦場を見学しました。
それぞれ、24の採光窓を有する明るい建物です。
この内の一方の制麦場の寸法は
長さ200フィート(約60.9メートル)
幅60フィート(約18.2メートル)ですが、
他方の制麦場はこれほど大きくはありません。
両方の建物の上階は大麦の貯蔵に使われており、
それぞれの容量は4千クオーターです。
僕らはスティープ(浸麦槽)に興味を引かれました。
鋳鉄製で、床に埋設されていますが、
階下から多数の鉄柱で支えられており、
とても独創的な設計となっています。
水が排水された後、
レバーの操作によって円形の弁が底からせり上がり、
浸漬された大麦は階下の発芽に放出されます。
制麦場の一方は二階建てで
他方は三階建てです。
下層階は全てコンクリート床で
乾燥やモルティングフロアとして使われています。


僕らは次に、制麦場と2基のキルン(乾燥塔)とモルトストア(麦芽倉庫)を繋ぐ、
小川に架かる歩道橋を渡りました。
キルンは40フィート(約12.1メートル)四方で、
モルトストアと隣接しています。
素朴な外観の外廊下は小川と平行し、
モルトをキルンへと台車で運搬する為の通路となっています。


そして、中庭の反対側に位置する第三の制麦場へと向かいました。
前述の制麦場より小規模ですが、
同様に石造りであり、
同様の設備を有しています。
スティープのある大麦倉庫があり、
階下はモルティングフロアとなっています。
キルンは24フィート(約7.3メートル)四方で、
建物の端に位置しています。
全てのキルンの床はワイヤー網で、
開放式加熱炉によりピートを用いて加熱しています。
乾燥したモルトはスクリューによって
中庭の中央部に位置し、ブリューイングハウスに隣接するミル(粉砕棟)へと運ばれます。
ミルの内部に設置されている粉砕ローラーは水車によって駆動しており、
必要があれば蒸気機関が補助動力となっています。
ミルから粉砕されたモルトはエレベーターによって、
マッシュハウス(糖化棟)上部に位置する
グリストロフト(粉砕麦芽置き場)へ直接搬送されます。


スティルハウス(蒸留棟)とマッシュハウス(糖化棟)は
一つ屋根の下にあり、
敷地内で最も目立つ存在である、
蒸留所の心臓部となっています。
建物は石造りで三角形を成し、
寸法は100フィート(約30.4メートル)×60フィート(約18.2メートル)です。
この建物の一方の端は糖化部門であり、
2槽の鋳鉄製加熱タンクが位置しています。
この内の一つは長さ16フィート(約4.8メートル)
幅10フィート半(約3.2メートル)
深さ9フィート(約2.7メートル)です。
もう1つは、長さ16フィート、
幅9フィート、深さ9フィートです。
マッシュタン(糖化槽)は鋼鉄製のタンクで、
直径22フィート(約6.7メートル)
深さ6フィート(約1.8メートル)で
内部には複動式の攪拌器があり、
蒸気によって回転しています。
このタンクの下にはスクリューがあり、
穀物粕はを中庭に位置するドラフハウスへと送っています。
そして、ドラフハウスからは
農夫たちが直接ドラフを荷馬車で運んで行きます。






訳注

スコットランドの行政区の一つで、
1928年以降はアンガスと呼ばれる地域だそうです。
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バンキール 1 [ローランド]

前回の冒険は蒸気船を使いましたが、
今回は鉄道の旅です。
早朝に出発し、デニーの街とバンキール蒸留所周辺を散策しようという目論見です。
リンリスゴーから過ぎ行く道中の景色は
とても興味深いものでした。
麗しい谷間を包み込むように丘陵が広がり、
農家の牧草地に野生の花々が咲き誇る様は
まるでタペストリーのようです。
さらに先を行くと、
より田園風景と言う風情が増してきます。
波打つトウモロコシ畑の中で小川がそこここでさざ波を立てていますが、
柔らかな美しさを際立たせているのは
遠くに見える緑に覆われた山々です。
スコットランドの歴史において、
今は平和な時間が流れるこの地域に
大虐殺と激しい衝突の場面があったことも事実です。
しかし、幸いなことに現在は、
剣は鋤へ、槍は枝打ち機へと姿を変えています。
1マイル(約1.6キロメートル)遠方のキャッスルキャリー
蒸留所の最寄駅です。
この場所は、アントニヌスの長城における古代の要塞でした。
この要塞は現在ほぼ痕跡がなく、
防御塔や堀のわずかな遺構が残るのみです。
ローマ時代の防塁はキャッスルキャリーを抜け、
14マイル(約22.5キロメートル)に渡ってこの地域を流れるキャロン川としばし平行に走り
ます。
そして、美しいキャロン川は
グレンジマスフォース湾に注ぎます。
この川には幾つもの滝があり、
最も美しいものはオーヒンティリーと呼ばれ、
「滝の注ぎ口」という意味です。
ここは訪れる価値があるでしょう。
キャロン川はスコットランドで最も歴史的な価値のある川です。
ローマ帝国の黄金期、
この川はブリテンにおける征服の境界線を表していました。
数々の血なまぐさい戦いが川辺で繰り広げられましたが、
今では戦のどよめきの傍を流れる代わりに、
貿易や商業を助ける川となっています。
デニーの街の製紙工場や印刷所に水や動力を供給するだけでなく、
ヨーロッパ屈指の規模を誇るキャロン製鉄所の巨大な貯水池を満たしています。
この地域出身の詩人マクニール曰く、


古くからその名を知られたキャロン川のほとりで
フィンガル氏は戦いに勝ち
オシアンは燃え立つ炎と共に
天に与えられた歌と共に歩みを進めた
そしてオスカーの不滅の名声を歌った
ここ死の谷で(訳注



列車から降りると、僕らは蒸留所へ歩いて行きました。
というのも、いかなる種類の車両の影も形もなく、
馬車を雇う場所も見当たらなかったからです。
線路沿いを半マイル(約800メートル)進み、
田舎道へと逸れるとあちらこちらに木陰が出来ていました。
蒸留所はフォース・アンド・クライド運河の岸に建てられており、
ここの場所では絵のように美しい景色となっています。
運河は谷を流れ、ネザーウッド領地の一角を形成し、
所々で緑の濃い傾斜地が水際まで続いています。
谷の終端には優雅なアーチの鉄道陸橋があり、
その高さそして長さは美しい景色の一部となっています。


バンキール蒸留所は1828年に
ペイズリーのデイヴィッド・マクファーレンによって創立されましたが、
それ以前は製粉所でした。
建物は石造りの優雅な外観で、
敷地面積は6エーカー(約2万4千平方メートル)です。
丘の傾斜地に建てられており、
その麓にはボニー川が流れています。
この川は、丘の上方では敷地の左翼部分を二分しながら、
ドゥープ川に沿って流れ
上射式水車を回し、貯水タンクを満たしています。
その水源はローワーグランピアンにあり、
糖化の仕込みに適した水質を誇っています。
敷地内には道路が交差し、
交通・連絡手段に優れています。
周辺環境や広さを含め、
郊外地の蒸留所の特徴を有しています。


bankier.jpg


訳注

「死の谷」と訳しましたが、
原文では「Duin na bais」となっており、
これはこの詩が示す近辺の街ダニペースのゲール語名だそうです。
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グレンジ 3 [ローランド]

案内人は次の僕らをスティルハウス(蒸留棟)へと連れて行ってくれました。
ここは新設の建物です。
採光も明るく良く換気のなされた空間で、
最新の技術を用いて建造されており、
防火処置が施されています。
古めかしい2基のポットスティルは
グラスゴーのフレミング・アンド・マクラーレン社製で(訳注1)、
容量は4千ガロン(約18.18キロリットル)と2千400ガロン(約10.9キロリットル)です。
蒸留釜は一週間に6〜7千ガロン(約27〜31キロリットル)を蒸留することが可能です。
この建物内には
容量3千ガロン(約13.63キロリットル)のローワイン/フェインツチャージャー、
同容量のローワイン/フェインツレシーバー
サンプリング器材付きのセーフなどがあります。
そして建物の裏側には2槽の巨大な円形の桶があり、
凝結の為のワーム管が中にあります(訳注2
隣にはスピリットレシーバー室があり、
スピリットレシーバーと
フェインツレシーバーがあります。
この蒸留所内のほぼ全ての工程で
液体が重力に従って流れるように設計されています。
また、巨大な熱交換器に補助された冷却機が
隣接する穀物倉庫の天井に設置されているのが見えました。
この素晴らしい配置は、様々な蒸留所で見られますが、
温水や冷水を貯めるタンク全てを天井に設置しないのは何故なのかと言う疑問を持ちました。
そうすれば地上のスペースを有効に活用出来る上に、
火事が発生した際には消火が容易に行えます。
ちなみに、アイルランドでは多くの蒸留所がそういった方式を採用しています。
スティルハウスには機関室が付属しています。
キルカーディのJ・ブラウン製蒸気エンジンが興味を引きました。
スティル(蒸留釜)内部のチェーンを駆動しており、
さらに、ローワイン、フェインツ、そしてスピリッツを
それぞれの受容チャージャーへと汲み上げます。
2基の蒸気ボイラーは
23フィート(約7メートル)×6フィート半(約1.9メートル)という寸法です。
スティルハウスの隣りにはスピリットストア(樽詰室)があり、
容量3千895ガロン(約17.7キロリットル)のヴァットがあります。
防火設備を完備しており、
消火器と止水栓は全てのフロアに設置され、
ホースは全ての建物と繋がっています。
中庭の一方の端には鍛冶場、建て具作業場、
そして最新鋭のクーパレッジ(制樽作業場)があり、
さらには厩舎、馬車庫と倉庫があります。
ガス工場がかなり離れた場所にありますが、
とても整った設備です。
敷地内の設備と蒸留所に隣接する支配人・事務員・税務官の居住する住宅で使用するガスは、
全てヤング社が供給しています(訳注3)。


次に僕らは丘を下り、
19箇所の保税倉庫を見学しました。
貯蔵容量は65万ガロン(約2千954キロリットル)だそうです。
中には新設された建物もあり、
全て換気も良く
地上階に位置しています。
グレンジ蒸留所(訳注4)には、工業廃水を沈殿槽へ集約し、
配管を伝って海に流すと言うシステムがあります。


古めかしい邸宅は以前は経営者の住まいとして使われていましたが、
現在は事務員、所長、社長のための美しいオフィスとなっています。


ここで製造しているウイスキーは良質なローランド・モルトであり、
通常の年間生産量である20万ガロン(約909.2キロリットル)は、製造能力の範囲内ですが、
発注量が増えれば26万ガロン(約1181.9キロリットル)を製造することが出来ます。
製造物はスコットランド、イングランド、インド、その他の植民地で販売されています。
敷地内に駐在している税務官は6名で、監督官はS・T・キンズマン氏です。






訳注1

ポットスティルの製造メーカーというと、
ロセスフォーサイス社が有名ですが、
これは、後にバーナードが訪問するロンドンの蒸留所でも登場する、
フレミング・ベネット・マクラーレン社のことだと思われまする。

スピリットセーフについて焦点を当てた、
こちらのサイトGlenlochy Distilleryさんによりますと、
http://www.glenlochy.com/SS_producers.html#Fleming
フレミング・ベネット・マクラーレン社はスピリットセーフの製造メーカーでもあり、
その昔のアードベグ蒸留所のセーフはこちらのメーカー製だったらしいですyo!



訳注2

要するに
ワームタブのことだと思われますyo!



訳注3

前々項にも登場する、
創立者であり現在の経営者であるヤング家が経営する会社なんでしょうね、おそらく。



訳注4

こちらの本によりますと、

Scotch Missed: The Lost Distilleries of Scotland

Scotch Missed: The Lost Distilleries of Scotland

  • 作者: Brian Townsend
  • 出版社/メーカー: Neil Wilson Pub Ltd
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: ペーパーバック


グレンジ蒸留所は
ディアジオ社のような蒸留所融合体企業である、
スコティッシュ・モルト・ディスティラーズ社(SMD)を形成する1蒸留所となります。
(そして、SMDはその後ディアジオの前身たるDCLの子会社となります)
しかし、第一次大戦の休眠期を経て一時期ウイスキー造りを再開したことはあるようですが、コンスタントな製造には至りませんでした。
1987年まで保税倉庫は使用されていたようですが、その後取り壊されています。

grange.jpg
古地図リンク
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A・バーナード
1887年刊
蒸留所探訪記
"The Whisky Distilleries of the United Kingdom"翻訳ブログ

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