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セント・マグデラン 1 [ローランド]

リンリスゴーに向けてウェーバリー駅を出発した時、
「美しき古きエディンバラ」の楽しい滞在が間も無く終わろうとしていることに
寂しさを覚えました。
17マイル(約27.3キロメートル)の旅は30分程で終わり、
蒸気機関車が駅に滑り込んだ時、
僕らは旅の目的地である巨大な蒸留所を通り過ぎていました。
汽車から降りると、
約束の時間まで1、2時間の余裕があることが分かりました。
リンリスゴーは精彩を欠いた活気のない街で、
これが勅許自治都市でかつては玉座を頂いた場所だとはとても信じがたいです。
しかしながら、素晴らしい遺跡と歴史的な遺構が溢れる街で、
活気のなさを補って余りあるものがあります。


僕らはまずリンリスゴー宮殿へと赴きました。
スコットランドで最も堂々たる大規模な遺跡で、
半島状の地に建ち、美しい湖に囲まれています。
芸術家である僕らの旅仲間の一人はこの宮殿をよく知る人物で、
案内役を買って出てくれました。
そして、この立派な遺跡の歴史について教えてくれました。
ここは幾人かの王に深く愛された居城で
メアリー女王生誕の地でもあります。
1542年12月7日、女王が生を受けた部屋に案内してもらいました。
そして、晩餐会の間、儀式の間、礼拝堂、美しい女王が住んだ部屋などを回り、
宮廷の廷臣、貴婦人や従者たちが列をなし、
今は冷たく死に絶えた大回廊にかつて命と光を吹き込んでいた様を想像しました。


僕らは塔の一つに登り、
周辺の地域や眼下の街を見渡しました。
しかし、風が強く危険だったのですぐに階段を降りることになってしまい、
過ぎ去った時代の遺構を名残惜しくも後にしました。


「甲冑で跪いた床は失われ
 火明かりが漏れた窓も今は虚ろ
 美しい声が響いた応接間の
 主は今や寂しい風のささやき」


そして僕らは蒸留所へと向かい、敷地の見学を開始しました。
一時期リンリスゴーには最大5箇所の蒸留所があったそうです。
一番古いものがブルザイオンで、
前世紀の半ば以前に存在していたのだそうです。
その後間も無く、フォルカーク地方のカースで蒸留所を経営していたドーソン氏は
もう1件の蒸留所をリンリスゴーのボニータウンに建設しました。
その後すぐに、ブルザイオン蒸留所に対抗する為、
セバスチャン・ヘンダーソンという人が
ダルハウジー伯爵夫人から聖マグダラの十字架の土地を借り、
セント・マグデラン蒸留所を建てました。
最終的にこの蒸留所はドーソン氏の所有となり、
ボニータウンの施設も移設したので
現在は2つの蒸留所が合わさったとても大規模な蒸留所となっています。
敷地面積は4エーカー(約1万6千平方メートル)近くありますが、
近隣の繋がっている土地が他に6エーカー(約2万4千平方メートル)あり、
600フィート(約182メートル)に渡って
鉄道に面しています。
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A・バーナード
1887年刊
蒸留所探訪記
"The Whisky Distilleries of the United Kingdom"翻訳ブログ

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