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グレン・キンチー 3 [ローランド]

モルティングフロアにも同様に頭上にレールが渡してあり、
発芽後はモルトと名を変えた大麦の運搬に使用されています。
エレベーターへと運ばれたモルトはそこから
巨大なキルン(乾燥塔)の中央部のワイヤーを編んだ床へと空けられ、
適切に乾燥が施されると
階下に位置するモルトデポジット(麦芽貯蔵室)へ落とし込まれます。
貯蔵室の端には同じ階層にグラインディングルーム(粉砕室)があり、
糖化の工程の前に必要に応じてモルトを粉砕することが出来ますが、
モルトはこの時点で専門的にはグリストと呼ばれるようになります。


マッシュハウス(糖化棟)はグラインディングルームと隣接しており、
粉砕されたモルトはエレベーターによりグリストホッパーへと運搬されます。
このエレベーターは、グラインディングルームに位置するエンジンを動力としています。
ホッパーからグリストは直下の巨大なマッシュタン(糖化槽)へと落とし込まれ、
専用のエンジンを動力とするレーキによって攪拌されます。
定められた時間が経過すると、浸出液は排水され、
並行した位置にある冷却機を経てアンダーバックに至り、
そこから強力な蒸気ポンプによってタンルーム(醸造棟)の発酵桶へと汲み上げれ、
発酵の工程が開始されます。
発酵が完了すると、この時点からウォッシュ(もろみ)と呼ばれるようになった液体は
同室に位置するウォッシュチャージャーへと張り込まれます。
ここから2基ある古いポットスティルとして知られる形式の蒸留釜へもろみが供給され、
蒸留によってもろみはウイスキーへと変化し、
工程は完成されます。
この時点で僕らは今まで見たことのないものを目撃します。
スピリットを抽出した後にはドレッグと呼ばれる大量の残留物が出ます。
これは街中では牛の飼料として大量に流通しているものの、
遠隔地では実際には使用する用途がなく、
何らかの方法で廃棄する必要が生じます。
川の沿岸権者の利益に反するので川に排水することは出来ないため、
蒸気ポンプで蒸留所から500ヤード(約457メートル)離れ、
70フィート(約21.3メートル)上方の場所にあるタンクに汲み上げられ、
近隣の農家が農地の灌漑に利用しており、
大いに喜ばれています。


僕らの記述から、各製造部門は一方が他方に収まる形になっており、
人力労働が最低限に留まるように配置されています。
僕らは全ての設備を見学する機会を得ましたが
一般的に設計が素晴らしいのに加えて
絶対的に清潔が保たれている点に感銘を受けました。


当蒸留所の年間生産量は約7万6千ガロン(約345.5キロリットル)で、
高品質なモルトウイスキーを製造しています。


僕らの見学が完了した頃には夕闇が迫り、
帰り道の周辺の景色は何も見ることが出来ませんでした。
帰途はダルキース経由で内陸部を通りました。
激しい雪嵐に襲われましたが、
僕らは居心地の良い馬車の中にいたので、
楽しい一時を趣のあるものにしてくれました。
ロジアンのハイランドのシャンパンのような空気を吸った僕らは
その晩気持ちよく眠りに落ち、
楽しい1日を結ぶことになりました。


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A・バーナード
1887年刊
蒸留所探訪記
"The Whisky Distilleries of the United Kingdom"翻訳ブログ

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